現場の市民権を得て、「人」に寄り添う仕事をする
日本触媒 × NorthSand 古川 貴啓
世界でも存在感を示す大手化学メーカー、株式会社日本触媒。そのITシステムを担う部署で頂いたお言葉は「ずっと一緒に仕事をしているような感覚」。入って1年も経たない現場で、ノースサンドの古川はどう関係性を構築し、「市民権」を獲得したのでしょうか。関係会社数社並行の基幹システム導入という、難易度の高いプロジェクトの裏側に迫ります。
鈴木 聡
株式会社日本触媒 DX推進本部IT統括部長
平井 良樹
株式会社日本触媒 DX推進本部IT統括部課長
ERP関係会社導入展開プロジェクト プロジェクトマネージャー
大野 義典
株式会社日本触媒 DX推進本部IT統括部
同プロジェクト ロジスティクスチームリーダー
奥 真智子
株式会社日本触媒 DX推進本部IT統括部
同プロジェクト 会計チームリーダー
古川 貴啓
大手SI企業を経てノースサンドへ入社。情熱をもった粘り強さが持ち味。お客様に寄り添ったプロジェクト管理を実施し、現場のリーダーのみならず、メンバーからの信頼も厚い。
世界のトップシェアを誇る化学メーカー、日本触媒
——本日はよろしくお願いいたします。まずは、日本触媒について教えてください。どのような事業を行っているのでしょうか。
鈴:大手化学メーカーとして、化学の力を使ったさまざまな製品やソリューションを提供しています。世界トップレベルの気相酸化技術を用い、アクリル酸や酸化エチレンなどの基礎化学品を安定的に生産・販売しています。その基礎化学品の誘導品である、高吸水性樹脂や各種ポリマー製品は世界でもトップクラスのシェアを誇ります。
大:中でもわかりやすいのが紙おむつの高吸水性樹脂です。世界の紙おむつの約4分の1に日本触媒の樹脂が使われており、弊社の独自技術により、原料から製品まで一貫して開発・製造しています。
綱渡り状態で進行するプロジェクトに必要だった「即戦力」
——私たちの暮らしの中にも、日本触媒の技術により支えられているものがたくさんあるのですね。その日本触媒様の中でソフトウェア、ERPなどの基幹システムの刷新を手がけていらっしゃる皆様が、ノースサンドの支援を受けたのはなぜなのでしょうか。
鈴:当初はERP財務領域が分かり、またプロジェクトマネジメント補佐ができる人材を探していましたが、採用で直ぐに人員を確保するのが難しい状況でした。フリーランスの起用を検討したものの、リモートワークを希望される場合が多く、オンサイトでの対応を希望している当社の要件に合いませんでした。そこで、良いタイミングで営業していただきご縁ができたノースサンド様にプロジェクトを支援していただくことにしました。特にリソース不足になっている、プロジェクトマネジメントを行う平井さんの補佐として、古川さんに来ていただきました。
平:2022年6月より、関係会社のERPプロジェクトが開始されたのですが、複数プロジェクトを同時並行で進めるタイトな計画に対して、予定外で主要メンバーの退職や異動が発生し、マンパワーが不足している状況で、プロジェクトを遂行していました。そのためプロジェクト全体を俯瞰し、きめ細やかなタスク管理をしつつ、成果物を確実に残すサポートができる方を求めていました。
鈴:また、業務領域間の連携も課題になっていました。SAPで「モジュール」と呼ばれる、財務会計、管理会計、販売物流、購買、生産品質などの業務領域に沿ってチームを編成しているため、異なる領域間でのコミュニケーションが不足しており、全体の足並みが揃わないとか、調整不十分で手戻りになるタスクが発生しかねない状況になっていました。
大:綱渡り状態で進行している複数のプロジェクトを引っ張ってくれるだけでなく、各業務領域を把握して、その間に入りながら進捗を促してくれる人材を求めていました。縦割りのチームの間で円滑にコミュニケーションを取りながら進捗を管理し、「次はこっちだよ」と導いてくれるような。
──そこに古川さんが参画されたのですね。最初に行ったのはどのようなことなのでしょうか。
古:まずは皆様の仕事の状況を把握し、追いつくことが大切だと考えました。「参画して最初の2ヶ月で勝負しよう」と決めていましたから、これまでの成果物全てに目を通し、行われている会議には全て出席しました。
──皆さんの古川さんへの印象はいかがでしたか。
奥:フリーアドレスなので席次表もない状況で、あっという間に全員の名前を覚えたのには驚きました。社内のメンバーだけでなく、開発ベンダーの方ともめげずにコミュニケーションを取る姿に「よくやってるなあ」と関心していました。
平:出社2、3日目のほとんど面識がない状態の頃、初めての進捗会議の場で、いきなり厳しいフィードバックをしてくれた時には、「プロだな」と思いました。物腰柔らかな第一印象とギャップがありましたが、最初からかなり頑張っていましたよね。
システム移行の進捗管理から会議の見直しまでを、泥臭く
──実際に現場で行った支援について教えてください。
古:関係会社の「SAP R/3」から「SAP S/4HANA」への移行を支援した他、既に導入済みの社内問い合わせ用のチャットボットに過去の履歴を読み込ませ、その対応範囲をSAP関連の問い合わせまで広げました。また、複数のプロジェクトマネジメントを同時に行っていたことで、仕事のベースになる業務にも手が回らない状態になっていたため、それらの支援も行いました。例えば、会議全体の見直しです。事前のアジェンダや資料送付、議事録の作成、検討事項などの見える化などを行っていただけるようになりました。また、先ほど平井さんが「不揃いな状態になってしまう」と仰ったプロジェクトの成果物を一覧化し、各フェーズごとに不足している文書が出ないように作成依頼などを行いました。
平:これらの業務をどんどん進めてくださるので、現場では一時的に人間関係のハレーションが起きていたほどです。ベンダーさんに対しても遠慮なく進捗状況を確認してくださるので、最初は皆が驚いていました。古川さんがすごいのは、そのハレーションをも課題として報告し、進捗管理していたことです。
古:「市民権を獲得する」という課題と捉えて、仲間として受け入れていただくためにできる限りの努力をしました。お名前の把握だけでなく、会議の前後の雑談や業務外のコミュニケーションを通して仲を深めるなど。努力の甲斐あって、その課題は無事クローズできました。
鈴:このハレーションは、弊社の社員気質と古川さんの仕事との折り合いの問題で、必然的に起きてしまったものだと思いますよ。その状況からよくリカバリーできたなと感心しています。
大:今では、「元から当社に在籍していたのではないか」と思うほどです。数年前の話をしていて「そういえば古川さんはまだいなかったんだ」ということもしばしば。それぞれの業務領域をあっという間に把握し、その間に入ってコミュニケーションをしてくれるので、課題だった業務領域間の連携もスムーズになりました。
奥:私たちのチームの一員のように古川さんが受け入れられただけでなく、ひとりひとりに寄り添った行動やコミュニケーションが、横の連携や進捗管理をスムーズにしてくれているのだと思います。
──古川さんが最も苦労した点はどのようなことでしたか?
古:結局は人の問題に帰結する進捗管理には心を砕きました。仕事をする人それぞれの気持ちに寄り添ったサポートを心がけ、どんな準備をしたら仕事をしやすいか、どのようなタイミングで情報を整えるべきかなど、思いやりを持った管理を意識しました。
まず、課題管理表を作成し、それぞれの課題の進捗確認を行いました。最も苦労したのは、どうしたら期日までにタスクを行ってもらえるかです。チャットで連絡するだけでは不十分な時は、実際に席までお伺いしにいく。それでもなかなか手をつけてもらえない時には隣に座ってタスクを見守らせていただくこともありました。
私は、全体のプロジェクトマネジメントを行う平井さんのサポートとして入らせていただいておりますので、指示を受ける前に動き、平井さんのイメージ通りに仕事が行われるように、時に泥臭いやり方であっても進捗管理に最も心を砕きました。
大:古川さんが皆を誘導してくれるので、タスクの進み方が少しずつ変わってきたのを感じます。これまでは、関系会社数社のプロジェクトが同時に走っているため、どの会議で何を言ったのかがわからなくなってしまうこともしばしばありました。それを整理していただき、道しるべを立ててくださるので、次に何を進めるのかが明確になりました。
ノースサンドの仕事の仕方が、コンサルタントを通して蓄積されていく
──まさに、ノースサンドが大切にしている「人」を軸にした仕事ですね。ノースサンドの仕事の仕方を体現している古川さんの働きっぷりが伝わってきます。日本触媒は、古川さんの支援によって、どのような変化を感じますか?
平:まず、プロジェクトにおいて変化を感じるのは、ひとつひとつのタスクを確実に進めるサポートによるプロジェクトマネジメントです。日々数多くの課題がモジュール単位で発生する中で、それらの遅延リスクを考慮し、能動的にメンバーとコミュニケーションを取って仕事を進めていただいています。
しかし、本当の古川さんの成果は、それらの仕事の仕方や行動をメンバーに見せてくださっていることにあるのではないかと思います。どうタスクを遂行するのか、どんな動きをしているのか、古川さんがどのように働いていたかが弊社のメンバーの意識の中に潜在的に蓄積されることが、これからの仕事に良い影響を与えてくれるのではないかと感じています。古川さんという外からの刺激により、これまで当たり前に行われていた仕事を再考することができました。例えば、ベンダーコントロールや進捗管理のこれまでのやり方を改めて見直すきっかけが生まれました。
──これからの日本触媒について教えてください。どのような展望をお持ちなのでしょうか。
鈴:弊社の社員の年齢構成を踏まえると、インソースとアウトソースを上手に使い分ける必要がさらに高まると考えています。それが円滑に進む状態でシステムを構築し、これからも多くのソリューションを提供できる会社でありたいです。そのために、もう次のご提案をいただくことになっていますよね。
古:はい、お任せください。一緒にお仕事をさせていただきながら、デジタル化などでご提案できることがたくさんあると感じています。それらを通して御社の力になれるよう、これからも頑張ってまいります。